植物から学ぶ

植物が作り出す循環システムは、なんと不思議な現象だろう。

太陽光と空気と水と生物を自在に操り、自然界に存在する無機物を錬金術師のように有機物に変え、巫女のように媒介となって我々人間のような従属栄養的生命へそれを惜しみなく与えてくれる。
微生物も昆虫も動物も人間も、すべての生命は植物によって生かされている。

都心の集合住宅の我が家の小さな小さな”ビオトープ”にさえも無数の生物が活動をしていて、私が余計なことをしない限り(水道水を与えたり、肥料を足したり、農薬を撒いたり)素晴らしく均整のとれた小宇宙を成している。

アブラムシが葉を食べることによって植物は摘芯をされて成長を促され、アブラムシの糞は土に落ちて栄養となり、増えすぎたアブラムシはてんとう虫が食べるが、アブラムシは甘い汁を蟻に与える代わりに蟻はアブラムシを守り、アブラムシが食べ尽くされることはない。
殺虫剤を撒くような人間の浅はかな行為が、この偉大な自然体系を破壊する。

では動かない植物はどうだろうか。
実は植物も行動する。
草は密集して増えすぎると、弱い個体は隣の強い個体を生き伸びさせるために自ら消滅を選ぶ。
窒素を放出して虫を誘い込み、自分を食べ尽くさせ、土に返り、栄養となって仲間の成長に貢献する。

お互いが少しずつ自分を犠牲にして他者に配慮し、全体の調和を目指して活動する。

そこでは生き伸びること、死を選ぶこと、他者の命を奪うことは、善でも悪でもない。

利他は世界の調和へと向かう、あるがままの現象。

Let it be.

思うに、自分がどう生きるべきかの答えも、なぜ生物は生まれて死んでいくのかの答えも、世界の諸問題の解決方法も、植物からすべてが学べる気がする。

未だ積ん読状態のゲーテの形態学・植物編を紐解いてみようと思う。