ツリーハウスと環境問題

気候変動について大人の責任を問う行動を起こしたグレタ・トゥーンベリさんに共感した子ども達が瞬く間に# FridaysForFutureのハッシュタグを広げ、世界規模でこの深刻な問題を考える大きな機会となりました。

今年の夏、40℃超えを記録する異常気象に襲われたフランス。
幸いにも私が訪れたフレンチアルプスはもともと冷涼な地方なので助かりましたが、南仏に入るととてもエアコンなしでは過ごせませんでした。

アルプスはヨーロッパ人のバカンス地として長い歴史を持ち、険しい山岳地帯の中に有数のリゾート村が散らばっています。

日本のように自然の中にコンクリートのビルが乱立するような景観無視の大型箱物開発はないものの、世界中から押し寄せる観光客に対応だけの施設があります。

ホテルって、多かれ少なかれ非日常の贅沢をする場なので、環境への負荷も大きい。

例えばタオルを毎日替えること。
バスタオル、ハンドタオル、フェイスタオル、自宅でも毎日替えますか?

一つ一つ綺麗にパッケージされたアメニティ。
ホテル全体でどれだけのプラスチックのゴミが発生し、どれほど大量のシャンプー類、合成洗剤類が下水に流れ込むのだろうと想像して気分が暗くなります。

アルプスは、ヨーロッパの主要河川の水源なのですから。

環境に配慮した宿ってないのかな、と探してたら、ありましたよ。
それがこのツリーハウス。

http://www.cabanes-entreterreetciel.fr

人間の存在自体が環境破壊だ、という声もあります。
今の状況では反論の余地無しですね。
でも、本来は人間だって他の生き物と同様、自然と調和して生きていた筈。

ツリーハウスは、森林を伐採して土地を開拓することなく、そこに生きる樹木に敬意を払いながら慎ましく住まわせてもらうための小さな住処。
その思想は日本で言うなら、縄文人のそれに最も近いですね。
彼らは弥生人のように森を拓き、田畑を広げ、土地を所有することを決してしませんでした。

オーガニックの石鹸やシャンプー類はラグジュアリーホテルでは増えてきたけれど、「ドライトイレ」は初体験。
水洗トイレは大掛かりな下水処理が必要で、設備を作るにも森を傷つけるし、河川にも負担をかけます。
ドライトイレは、とても素朴で優しいシステム。
森の仕事で発生するおが屑を水の代わりに使うだけ。
使うたびに柄杓でおが屑を掬ってトイレの中に入れます。


トイレ交換は1日に一度。
おが屑が匂いを吸収するらしく、殆ど匂いません。
私たちの排泄物は土に埋められ、分解されて循環します。
無駄も矛盾も一つもない、完璧なシステム。
水洗トイレは循環しませんね。
都市では仕方ないのですけどね。

トイレを毎日交換する作業は大変だけど、過剰な便利を享受し続けている現代の私たち、自然の中で過ごさせてもらうなら、お金を払ってでもその大変さを引き受けるべきだと考えさせられました(このツリーハウスは五つ星ホテル並みの料金です)。

私は、旅にはマイ歯ブラシ、無添加の歯磨きペースト、化学合成物質ゼロのシャンプーと石鹸を必ず持参します。
自分のためでもあるけれど、むしろ行く先々の環境への配慮でもあり。
私の嫌いな日本のことわざに「旅の恥はかき捨て」というのがあります。
旅先で何も捨ててはいけません!(笑)

このツリーハウスは、いかにもロハスでエシカルでLOVE&PEACEな若い人達が運営していて、食事はヴィーガンだったりするのかと思ったらハムチーズどっさり、コテコテのローカルフードで、それはそれで安心。
アルプスの山中でアボカドとキヌアとブラジルナッツのサラダとか出されたら、地球に申し訳なさすぎるものね。

伝統的な酪農は本来、自然と調和している筈ですから(環境会議に出席したセクシー大臣がNYで食べたGMO&薬漬けの大量生産牛肉とは違います)、慎ましやかな伝統文化を否定する必要もなく。

とても小さな宿ですが、こんな宿の存在がこれから人々の意識を変えていくのだと思います。