排外主義、権威主義、花の虐殺

我が家のバルコニーで、ニセアカシアの花が満開になった。

和名は「ハリエンジュ」。

「アカシアのはちみつ」と呼ばれるものは、実はこのニセアカシアのはちみつ。
上質なはちみつが取れるだけでなく、香りの良い花房は食べても美味しい。
天ぷらにしたり、おひたしにしたり、サラダに散らしたり。
ほんの一週間ほどしか咲かないので、とても贅沢な料理。
明治時代に有用な樹木として輸入され、街路樹として、庭木として、防風林として大活躍、日本各地の気候に順応してどんな痩せた土地にも根を張り、土砂崩れも防いでくれる。
大いに人間の役に立つだけでなく、その根に生息して共生関係にある根粒菌と栄養を交換するシステムを持ち、人間が肥料を施す必要なく、痩せた土壌を改良してくれる。
これほど良いことづくめで素晴らしい樹木なのに、残念ながら現在は国の機関により「侵入生物」「侵略的外来種ワースト100生態系被害防止外来種」として扱われ、駆除も推奨されている。
「駆除」の理由は、ニセアカシアの強い樹勢に押されて従来の松林などが減少したからとされている。
それが真実かどうかはわからない。
たまたま枯れた松林が近くにあっただけかもしれない。
少なくともこの20年、気をつけて見てきたけれど実害を私は見たことも聞いたこともなく、国立環境研究所のデータベースは更新する気配もなく、おそらく定期的に調査もしていないのだろう。
何せ人は、都合が悪いことが起きるとすぐに「あいつらのせいに違いない」と外国人や移民をはじめとするマイノリティのせいにしたがるのだ。
松が枯れて、その横に外来種の生育旺盛な植物があったなら、「あいつらのせいにちがいない」と考えたとしても不思議ではない。
あいつらを駆除せよ!
労働力として移民を大量に移住させておいて、増えたら増えたで自分達の利益を少しでも損なうと「お前らこの国から出て行け」というのと同じである。
他にも「見かけたらすぐに駆除しましょう」と言われる植物があるが、本当にその植物が害なのか、自分の目で確かめようとする人はどの位いるだろうか。
国の研究機関が言ってるから、と無思考に鵜呑みにしない。
特にそれが対象の生命を奪うことであるなら尚更のこと。
関東大震災の直後、デマを信じて朝鮮人を虐殺したことを、日本人として私達は忘れてはならない。
動物も昆虫も植物も同じ生命、「駆除」などしていいわけがない。
我々人間は自分達の利益のために害獣・害虫・害植物と勝手に決めつけているだけで、自然界では彼らは害どころかそれぞれが大切な役割を担った存在であり、完璧に調和して生きているのだ。
もし地球外から支配者がやってきて、地球上で真っ先に駆除するのは人間だろう。

自然の調和を乱す、唯一の存在。

ニセアカシアの花房を摘んで天ぷらにする。贅沢な春の味覚。